『先進医療』とは、厚生労働大臣が承認した治療法や高度な技術を用いた医療などのうち、保険給付の対象とすべきかどうか検討中の医療のことです。先進医療は、全額自己負担となりますが保険診療との併用が認められています。
令和5年6月より、福岡県にお住まいの方には、県から保険診療と併用可能な先進医療に係る費用の一部が助成されることになりました。
先進医療に係る費用の助成を希望される方は別途申請手続きが必要となります。
詳しくは福岡県庁のHP「福岡県不妊に悩む方への先進医療支援事業」をご覧ください。
当院で実施可能な先進医療一覧
タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養
費用:22,000円
カメラ内蔵の培養器を用いて受精卵・胚を培養する方法です。この方法では、培養器から胚を取り出すことなく胚の発育を観察することができるため、胚に余計なストレスを与えることなく培養できます。また、より詳細な胚の発育状況を観察できるため正確に胚の質を評価することができ培養成績および妊娠率の向上が期待されます。
適応は、全ての方で初回治療から実施可能であり、当院では原則として全例に実施いたします。
ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI)
費用:20,000円
顕微授精の際に卵子に注入する精子を選ぶ方法の一つで培養成績および妊娠率の向上が期待されます。一般的に顕微授精の際の精子選びは、形態がきれいでかつ動きが活発な精子を術者である胚培養士が顕微鏡下で探しています。
PICSIでは、成熟した精子はヒアルロン酸に接着し、未熟な精子では接着しないという性質を利用しまして、顕微授精用の特殊な培養皿を使用し、ヒアルロン酸に接着した精子の中から形態がきれいでかつ動きが活発な精子を選びます。
適応は、胚移植を実施したけれども反復して妊娠に至らない顕微授精適応の方になります。初回治療では、本先進医療の対象外となります。
子宮内膜刺激術(SEET)
費用:35,000円+胚移植料(保険)
胚を培養している液(培養上清)を回収し、胚盤胞移植の2~3日前に回収した培養上清のみを子宮内に注入する方法です。培養上清には、子宮内膜が胚を受け入れるために必要な成分が含まれており、胚盤胞が着床しやすい環境となるため、妊娠率の向上が期待されます。
適応は、全ての方で初回治療から実施可能です。
二段階胚移植法
費用:新鮮胚移植の場合75,000円、凍結融解胚移植の場合120,000円+胚移植料(保険)
採卵から2~3日目の胚(初期胚)を胚盤胞移植に先立って移植することで子宮内膜の環境を胚盤胞が着床しやすい環境へと調整する方法です。二段階胚移植法は、妊娠率の向上が期待されますが、2回の胚移植(初期胚移植+胚盤胞移植)で合計2個の胚を移植するため多胎のリスクが高くなります。
適応は、胚移植を実施したけれども反復して妊娠に至らない方であり、さらに子宮内膜刺激術(SEET)を実施したことのある方になります。初回治療では、本先進医療の対象外となります。
子宮内膜受容能検査(ERA)
費用:110,000円
一般的に子宮内膜が胚の着床に適した環境となるプロゲステロン投与開始から5日後(胚盤胞移植日)に子宮内膜がきちんと着床に適した環境となっているかどうかを調べる分子生物学的検査です。そのため、ERAは、子宮内膜が胚移植に適した理想的な環境となる時期を判定することに役立ち、子宮内膜にとって理想的な時期に胚移植を実施することが可能となるため、妊娠率の向上が期待されます。
適応は、胚移植を実施したけれども反復して妊娠に至らない方になります。初回治療では、本先進医療の対象外となります。
子宮内細菌叢検査(EMMA、ALICE)
費用:66,000円
EMMA(子宮内膜マイクロバイオーム検査)は、子宮内膜に存在する細菌を網羅的に分析する検査です。この方法は、最近のDNAを調べることで、妊娠成功との関連が認められているさまざまな子宮内膜の細菌群を検出します。
ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)は、慢性子宮内膜炎と呼ばれる子宮内膜の慢性的な炎症の原因に特に関りが深い細菌性病原体の有無を検出するものです。子宮内膜におけるこれら細菌性病原体は不妊および妊娠合併症に関係することがわかっています。
適応は、慢性子宮内膜炎が疑われる方となります。
ERA/EEMA/ALICEは、同時に検査可能であり、セット価格は150,000円となります。
いずれの先進医療につきましても保険診療を行わず、全ての治療を自費診療として行う場合には別途消費税がかかります。