誘発法と採卵までのスケジュール
- ショート(Short)法:点鼻薬を月経1日目、HMG注射を月経3日目より開始する方法です。
- ウルトラ・ショート(Ultra short)法:点鼻薬とHMG注射を月経3日目より開始する方法です。
- ロング(Long)法:月経開始前より点鼻薬を、月経3日目よりHMG注射を開始する方法です。
- ミニマル(Minimal stimulation)法:点鼻薬を使用せず、内服薬のクロミッドやHMG注射で卵胞を育てる方法です。
※上図で示した「移植」は新鮮胚移植です。凍結融解胚移植の場合には、別周期の移植になります。
点鼻薬について
ナファレリン(GnRH agonist)という点鼻薬を使います。ARTで点鼻薬を使用する目的には、以下の2つがあります。
- 脳(下垂体)から出ている、卵巣に卵胞を育てるように指令を出すホルモン(FSH)を抑制し、HMG注射で多くの卵胞が均一に育つようにする
- (1)と同じく下垂体から出ている排卵を促すホルモン(LH)を抑制して、採卵前に自然排卵しないようにする
HMG注射薬について
通常の排卵では、下垂体から分泌されるFSHの作用により、毎周期、10数個(加齢等により個数が減少します)の小さな卵胞の中から1個だけが選択され発育し排卵しますが、ART治療ではできるだけ多くの卵胞を育てるため、月経3日目より基本的に毎日HMG注射(FSH成分を含む排卵誘発剤)をします。 数日毎に血液検査でエストロゲン値と超音波検査で卵胞の発育状況を確認し、注射の投与量を調整していきます。なお、注射の量は年齢・治療歴などで変わることがあります。
「痛くない、安全な採卵」のために
採卵の方法
当クリニックでは、全国的にも例をみない麻酔専門医による麻酔のもと、 より安全な採卵が行える態勢を整えています。
採卵は、腟を経由して行います。 その際には、血液の流れが確認できるカラーの経腟超音波を使用し、 血管を傷つけないように、モニターを確認しながら腟壁から 左右の卵巣内の卵胞に針を刺し入れ、卵胞液ごと卵子を吸引します。 採卵に用いる針は、排卵誘発剤の注射の時とほぼ同じ大きさです。
卵の数によって多少前後しますが、約10〜15分程度で終わります。
麻酔科医による麻酔
ARTにおける採卵では、一般的に麻酔が用いられますが、麻酔専門医が立ち会う施設はまれです。
採卵当日に処置ベッドで点滴を行い、点滴ラインから麻酔薬を投与して静脈麻酔を行います。麻酔は採卵術を行う十数分間のみで、採卵中の痛みはまったくありません。採卵終了後は、すぐに目が覚めます。
採卵後数時間はベッドで安静にしていただきますが、当日には帰宅できます。翌日の日常生活、仕事にはまったく支障はありません。
また、ご希望であれば鎮静剤のみでの採卵も可能です。
麻酔と安全性
麻酔による副作用、合併症としては、吐き気やめまい、頭痛、一時的な血圧の低下(当院では0.003%程度の方に認められますが、すぐに改善しています)などがあります。これは麻酔の影響で、人によって差はありますが、通常、48時間以内に消失します。
また、麻酔薬によるアレルギー反応で高熱が出る悪性高熱症は5万人に1人といわれています。
BMI指数が28以上では、麻酔リスクが上昇するため、体外受精治療での麻酔をお断りすることがあります。