清浄度
胚培養の基本は、無菌操作であり、体外における多くの培養操作は無菌箱であるクリーンベンチ内で行われ、胚はインキュベーターと呼ばれる培養機器内で発育します。しかし、クリーンベンチやインキュベーターの開閉時などは、培養室の環境に暴露させるため、培養室の清浄度は、培養系に落下細菌や微粒子が混入するリスクを考慮し、一般手術室以上のレベルが要求されます。
一般手術室の清浄度は、アメリカ連邦規格でクラス10,000~50,000(1立方フィート中に0,5μm以上の粒子が10,000~50,000個以下)であり、培養室は通常クラス10,000で設計されている施設が多いです。
当クリニックでは、病院用クリーンエアコンを使用しHEPAフィルターで処理することで培養室内へ綺麗な空気を供給しています。そして、この浄化された空気を「天井吹き出し→床吸い込み」の層流方式で循環させる当クリニック独自の空気清浄システムを構築し、清浄度クラス1,000という高い清浄度を維持しています。毎年、清浄度試験を実施していますが実際には清浄度クラス100レベルを維持できていること確認しています。
層流方式の空気清浄システム(天井と床)
また、床は、壁との角をできるだけ作らないシームレス構造と手術室で用いるリノリウムの床材に帯電防止のワックスを使用することで埃塵の堆積を抑えより清浄度を高める工夫をしています。さらに、培養室への入室にはエアシャワーを採用することで培養室内の清浄度を下げることなく入室を可能にしております。
シームレス構造
エアシャワー
照明
母体内において、卵子や胚が光に曝露されることはありません。ヒト胚の発育における光の影響は明らかにされていませんが、ハムスターやマウス胚においては、紫外線だけではなく可視光線の中の短波長光が胚発生や胚質を低くしてしまう影響があるということが分かっています。
そこで、当クリニックの培養室内の照明はほとんど紫外線が含まれないLED照明を採用し、その中でも特に卵子や胚へのストレスがより低い長波長領域が多い光を採用しています。また、培養室内に通じる全てのガラス窓には紫外線カットのフィルターを貼り胚にやさしい培養室を構築しています。
胚にやさしい長波長領域のLED照明と紫外線カットフィルターを貼った窓
温度と湿度
培養室内の温度・湿度は、ある程度の範囲内であれば胚培養に影響しないとされています。しかし、極端な低温および高温環境下は、スタッフの作業効率を低下させ、37℃を超過した高温環境下では、加温装置のあるインキュベーターがオーバーヒートしてしまい培養環境に影響を及ぼします。また、湿度が高い環境ではカビの発生のみならず、結露も発生しやすく胚培養に使用する機器や設備の劣化を早める原因となります。
そこで当クリニックの培養室は、一年を通して温度は28±1℃、湿度30%~60%を維持する空調システム設定を行い24時間稼働させることで、最適な培養環境を維持しています。
災害時対策
培養室内の機器は、非常用バッテリーに接続されており、急な停電が発生しましても機器が停止することなく、安全に胚培養を継続できるシステムを構築しています。
また、地震対策は、2005年に起きた福岡西方沖地震の経験から培養機器が転倒しないための架台を特注で作製し、固定補強や免震素材を活用しまして耐震・免震構造を実現しています。
さらに、当クリニックでは、培養室にスタッフがいない場合においてもインキュベーターの異常発生を確認できるように、別室に監視モニターを設置しており、休日や業務終了後に発生した異常に対しても24時間監視可能な遠隔アラームシステムを導入し、異常時には培養室スタッフへ直接連絡が入り、迅速な対応を行える体制を整えています。
非常用バッテリー
インキュベーター監視モニター/遠隔アラームシステム
Viewer(ビューア)
Lab Works Viewerという窓があるのが、当クリニックの培養室の特徴でもあります。この窓から、胚の発育の場所である培養室内を見学することができ、培養士・ラボコーディネーターの業務風景もご覧いただくことができます。患者様の大切な胚をお預かりする私たちの仕事を、ぜひ一度、ご自身の目でご確認ください。
安心して、ゆだねていただくための窓 Lab Works Viewer